あなたとクルマの、いい関係。

STORY

最後のキャンプ Season 2021 Autumn
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悩みや不安は部屋に置き去りにして、アヤカは助手席の窓から見える木々のざわめきを眺めていた。隣にはサリ。サリは愛車のハンドルを握りながら得意げな笑みを浮かべている。

ふたりきりの女子キャンプは何度目だろうか。感情をいつも大胆にぶつけてくるサリは、今日はいつにも増してハイテンション。物静かなアヤカは、つい引き込まれてしまう。

そんなふたりを乗せて走るクルマは、心なしか愉快そうにみえた。

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山の中腹にあるキャンプ場に着くと、早速ふたりは慣れた手つきでテントを張り終え、サリは得意の料理に取りかかる。その側でアヤカは愛用のカメラでシャッターを押し続ける。

 

「さすがサリシェフ。ニューヨークの本店が引き抜いたのも当然よね」

「まあね。わたし、ぜったい負けないから」

 

止まらない会話。お互いの名も知らず、初めてあいさつを交わしたあの日から、ずっと止まらないままだ。

片思いの彼から、初めてきたメールを見せたあの日も運転席にはサリがいた。失恋した帰り道、泣きじゃくるアヤカをサリはクルマで何度も迎えに来てくれた。そしてサリがニューヨークへ行くことが決まったとき、アヤカは助手席で手を叩いて喜んだ。
ふたりは、いつでも理由を見つけて走ってた。そして夢を見てた。
いつでも⋯。

 

小さく揺らぐ焚火の炎を見つめながらサリがそっとアヤカに語りかける。

「あいつのこと、頼んだよ」

「うん」アヤカが応える。

「あいつのこと、好きになってもかまわないからね」

そしてふたりはおもむろにサリの愛車のほうに目を向けた。

 

ようやく寝袋に落ち着いたふたりは、静かに何度も寝返りをうつ。

 

眠れない。

 

月明りも、虫の音も、そよ風も、この上なく心地がいい夜なのに、眠れない。そんなことはわかっていた。

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東の空がうっすらと明るくなる。アヤカはテントから出てその空を眺めていた。自分はどこへ向かおうとしているのか。たとえ一歩前に踏み出したとしても、サリはもう、そばにはいてくれない。

 

そんなことはわかっていた。

 

やがて山の稜線から朝陽が顔を出す。アヤカはその姿をカメラに収めようとするが、あまりにも眩しすぎて目を細めた瞬間に、涙がこぼれ落ちていった。

そんなアヤカの肩にそっと手が置かれる。振り返ると朝陽に照らされたサリが立っていた。

 

「まぶしすぎるよ、もう」

少しふてくされたようにアヤカが言う。

「そっか、まぶしいのか」

優しい笑みを浮かべながらサリがこたえる。

 

「まぶしいよ―」

朝陽に向かってアヤカが叫ぶ。

「まぶしいか―」

サリも叫ぶ。そして笑い合う。いつしかふたりは明るい朝の光に包まれていた。

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数日後の早朝、空港の駐車場にサリのクルマがあった。トランクから荷物をとり出すサリをアヤカが手伝う。

「じゃ。ここで」

「うん。ここで」

「わたし、がんばるから。アヤカも写真…」

「わかってる」

「こいつのこと頼んだよ」

そう言ってサリは愛車のキーをアヤカに渡す。

「大丈夫。もうずっと前から好きになってるから」

受け取りながらアヤカが笑う。

 

クルマのそばでアヤカは、サリを乗せた飛行機が飛び立つのを見送った。そしておもむろにエンジンをかけ走り出す。

 

行く先には朝陽が輝いている。

「もう、まぶしすぎるよ」

今にも泣き出しそうな顔でアヤカがつぶやく。やがてその表情は力強さに変わり、まっすぐに前を向いていた。

CHARACTER

  • アヤカ

    アヤカ

    AYAKA

    カメラマン  /  ファインダーから見える世界に没頭しがちなのか、その焦らない見た目がマイペースな性格と映りがち。そのせいか、少し引っ込み思案に見られてしまうところもある。性格的に対極にあるように見える親友サリとは学生時代からの長い付き合い。サリが、ニューヨークに行くことが決まり、ともに過ごせるうちにと最後のキャンプに来る。サリのことを祝って送り出したい気持ちと、ひとり残される淋しさ、そしてなによりサリの行動力に眩しすぎる憧れもある。

  • サリ

    サリ

    SARI

    シェフ  /  勝ち気でチェレンジ精神が旺盛。サバサバとした性格でテキパキとなんでもこなせるのは、長年大切にしてきた愛車がランドクルーザー70であることからもわかる。ニューヨークのレストランでの採用が決まり、長年の付き合いである親友アヤカと最後のキャンプに来る。いつもはアヤカのことを引っ張るような場面が多いが、本当はアヤカが芯の強い、夢に向かって進む人間だと知っている。

  • クルマ(古田新太)

    クルマ(古田新太)

    TOYOTA LAND CRUISER 70

    白いランドクルーザー  /  サリが長年大切に乗っている愛車。行動力のあるサリの性格にぴったりのチョイスで、細かいことに捉われないスタイルを体現したものだとオーナーのサリ、そしてクルマともどもに自負している。サリとアヤカが一緒に過ごした年数を、ふたりの様々な経験や感情を見つめながら過ごしてきた。オーナーであるサリが海外へ行く夢を実現させたことを喜ぶが、それは同時にサリとの別れであることを理解しており、残される親友の寂しさを共有していることはアヤカと同じ立場である。

MUSIC

奇妙礼太郎「アスファルト」

奇妙礼太郎「アスファルト」

Mini Album ハミングバード/
ビクターエンタテインメント)

STRANGE REITARO

大阪府出身。 2008年より奇妙礼太郎トラベルスイング楽団として活動。バンド解散後、TENSAI BAND Ⅱ(ex.天才バンド)。アニメーションズ等のバンドを経てソロアーティストとして活動。ボーカリストとして、サントリーBOSSゴールデンタイム『ザ・ドリフターズ篇』等多数のCM歌唱も担当し話題となる。2017年メジャーデビュー。同年1stアルバム「YOU ARE SEXY」、翌20182ndアルバム「More Music」リリース。202169日にオリジナル作品としては3年ぶりとなるミニアルバム「ハミングバード」をビクターエンタテインメントよりリリース。

STAFF

CAST

KOTOKO/IKEDA KOTOMI

SPECIAL THANKS

FURUTA ARATA

PRODUCER

ASAO TOMONORI

EXECUTIVE DIRECTOR

KATO KEN

ASSISTANT DIRECTOR

MOTOYAMA AYAKO

CINEMATOGRAPHER

TATSUTOMI KOHEI

B CAMERA

HASHIMOTO KENSUKE

LIGHTING DIRECTOR

ASAURA KENICH

LIGHTING ASST.

ITOI YASUMASA

EDITOR

YAMAMOTO KATSUMI

MIXER

YAMASHITA TAKUYA

NARRATOR

NAGATSU MANA

STYLING

ARATANI KAORI

STYLING ASST.

NISHIMOTO SHINOE

HAIRMAKE

ELLY

FOOD COORDINATOR

MATSUBARA SAKI/HIROKANE MANA

OUTDOOR SUPERVISION

YUKA

CASTING

SATO MIKA

 

YAMAMOTO SHIN

ART DIRECTOR

KAWAGUCHI TATSUYA

PHOTOGRAPHER

NAKAO TOSHIYUKI

PHOTOGRAPHER ASST.

WATANABE HANA

BASE STORY

MARUYAMA CHIHIRO

 

 

MUSIC

KIMYO REITARO

 

 

ARTIST MANAGEMENT

TRUNK / RICOMOTION

AGENCY

TRADEMARK

GRAPHIC DESIGN

COUNTERPUNCH

PRODUCTION

CRAFT & COMPANY

Mobility Life、 それは誰かの想いを のせて走ること。
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